大手鶏卵業者から大臣在任中に現金500万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部は今年1月、収賄罪で元農林水産相を在宅起訴した。別の元農相も不透明なカネを受け取っていた。
おカネに汚い大臣を追及すると同時に考えるべきは鶏卵業界がなぜ、何を大臣に要望したのかということだ。それは鶏飼育を今のままで変えないように、との思惑である。
私たちが安い卵を求めるために、劣悪な環境で苦痛に満ちた一生を強いられている鶏たち。床がA4サイズほどの狭い檻で死ぬまで身動きできない。土や草の上で自由に歩けるはずの脚は、痛い金網だけしか知らない。ずらっと並ぶケージは、とんでもない過密状態でひとたび感染が起これば殺処分されることになる。抗生物質を与えられているが、鶏たちにとっても消費する私たちにとっても、安心安全とはいえない。
アニマルウェルフェア(動物福祉)とは、日本も加盟しており、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告で「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されている。また、アニマルウェルフェアの状況を把握する指針として「五つの自由」が挙げられている。
「五つの自由」とは、(1)飢え、渇き、栄養不良からの自由、(2)恐怖、苦悩からの自由、(3)物理的、熱の不快からの自由、(4)苦痛、傷害、疾病からの自由、(5)通常の行動様式を発現する自由のことだ。つまり、アニマルウェルフェアの世界基準は「かれらの本性に抗う取り扱いを控え、苦痛やストレスにさらされないようにするべき」という考え方に基づいているのだ。
アルゼンチンでは、チンパンジーを動物園から解放し、自然保護区に移せとの判決が出た。米カリフォルニア州などでは強制的に肝臓を肥大させる方法が問題視され、フォアグラの生産や販売を禁止している。日本の鶏卵業界が農水大臣に要望した一つは、そんな世界の潮流を取り入れないように、とのことだったという。
養豚でも同じような問題があるらしい。テレビや新聞はこれらの問題をほとんど報道していない。汚職事件として扱っているだけだ。スポンサーの顔色をうかがわざるを得ないのだ ろう。
ぜひ「忖度」とは無縁の『週刊金曜日』で詳しい情報を記事にして欲しいと思う。
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