中学2年の夏休み、2学期が待ち遠しくてワクワクしていた。小学校ではずっと同じ組、中学では別の組になった男子に会えるから…
夏休みも終わり間近のある日突然「田舎に帰る」と父が言った。「なんで?」「どうして?」頭の中で繰り返したが口に出すことができなかった。1人で泣いた、床に就いてからも泣いた。この先どうなるのか・・・不安と悲しみでどうしていいか分からなかった。
2学期の最初の日、母と学校へ挨拶に行った。校長室を出たところでその子にばったり会った。私はうろたえた。彼がどう思っていたのか知らなかったが、じっと見つめあった、ような気がした・・・・・・ただそれだけだった。
そして母と弟と私の3人での間借り暮らしが始まった。その家が使い終わった台所では音をたてないようにし、襖だけで仕切られた部屋でも息をひそめた生活が数か月。
その辛い時代から何十年かが経って、東京の小学校の同窓会があった。秀才だった彼は東大に入ったと聞いていた、期待に胸が高鳴った。しかし彼は来なかった・・・名簿に逝去と書いてあった。いつなのか、病気っだったのか誰も知らなかった。
ワクワクしながら2学期を待ったあの夏休みは本当にあったのだろうか。少年らが遊ぶ校庭が光に包まれ、白い記憶となっている。
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